藤田 潤
藤田 潤
ガラス造形家
日本ガラス工芸協会功労会員
回を重ねて充実し、進化する本展が3年にわたるコロナ禍のなかでも無事に開催できることは大きな喜びです。また、開催に当り多くの労苦を越えて来た主催者に心より敬意を表します。
本審査はリモート形式で実施されたので海外の審査員諸氏には実作を見ずに選考することの不安もあったと思いますが、静止画像だけでなく動画や拡大も現場で行われ、審査員からの画像要請も皆的確であり安心しました。さらに地球をまたぐ時差にも拘らず、充実した意見交換や投票ができたと思います。
私は審査会が始まる前に隣室に並べられた実作を観賞する時間を得られましたが、見ているうちに不思議な感覚が湧きました。少し時代が戻ったというか、前回やその前の入選作に比べ「静かな、自然体の」作品が多くなった気がしました。
現代のガラスアートの世界はより強いインパクト、明快なコンセプトを表現することに重きを置いて発展してきたことは周知の事実ですが、今回のものは調和がとれた、ガラス素材の美しさをより引き出そうとする傾向が強いのではないかと感じました。特に大賞受賞の作家は極めて若く、今の閉塞し、逆境にある社会環境の中で自己の心を安定させ、それを人に伝えられる信念を持って制作されている姿に強く共感を覚えました。
この「国際ガラス展・金沢」は、常に世界のガラスアートの最先端を紹介し続けてきましたし、同時に次の時代を予知するものでもありました。今展が明るい未来を告げるものになって欲しいと心から思います。