メテ・ビーレフェルト・ブルーン
メテ・ビーレフェルト・ブルーン
ガラスキュレーター
「国際ガラス展・金沢」は、1984年に第一回が開催されて以来、世界のコンテンポラリー・グラスアート作品にふれる舞台となってきました。グラスアーティストにとって、自分の技術のスキルアップや、最先端のグラスアートの芸術性を、多くの人に見てもらう貴重な場でもあり続けています。コロナ禍の困難にもかかわらず、世界37の国や地域から作品の応募がありました。このガラス展の意義が世界に認められた証です。
今年の本審査はオンラインで行われました。コロナ対策とオンラインには、さまざまな工夫がなされ、丁寧で気配りにあふれた審査となりました。国際ガラス展の事務局、開催委員会のみなさま、そして審査員として参加の先生方の
ご尽力のおかげです。「国際ガラス展・金沢2022」の本審査に審査員として招かれましたことを心から名誉に思います。
本審査において、受賞作品を選ぶ際、まず作品の質の高さに感心しました。その後、作品を美しく見せるさまざまな工夫がなされた革新的なグラスアート作品の数々について、審査員同士で話し合い、受賞作を決定しました。大賞受賞作品、田中里姫さん作の「切々、憧憬」は、繊細な淡い色調の三つのオーガニック・フォルム/ボウルで構成されている美しい作品です。この作品は、近づこうとすると、いつしか遠ざかる、そんな感覚にとらわれます。美意識と高い技術があってこその作品です。
私は、個人的にはJIANG Guimeiさんの「癒しの間」に感動しました。「今回のガラス展にだけ」と条件のついた金賞2作品のうちの1作品です。パート・ド・ヴェールで作られた2片のガラス片がこの作品を構成しています。紙のようなガラス片は非常に魅力的な視覚表現であり、漢方薬を包むための紙を表現しています。しかし同時に、私はこの2片のガラスの間に表現されたケアとプロテクションの感動的な関係性を見い出したのです。
奨励賞を受賞した小曽川瑠那さんの「息を織る – April 2021 –」は、作者のコロナ禍での制限という個人的な経験が作品の中心になっています。この興味深く、また考えさせられる作品は、私たちすべての気持ちに共鳴するものです。
メテ・ビーレフェルト・ブルーン賞には、JOSZCZUK-BRZOZOWSKA, Antoninaさんの「Materialization」を選びました。歴史的なメッセージと、今という時にかなったメッセージの両方を語りかけてくる力強い作品です。