原 智

原 智

原 智

金工作家
金沢美術工芸大学教授

「国際ガラス展・金沢2022」の一次審査を今回初めて務めました。1984年より開催されてきた本展覧会ですが、日本のみならず世界のガラスシーンを伺い知ることが出来る貴重な展覧会であり、伝統と現代が調和しながら息づく街である金沢から発信される意義は大きいと考えます。

37の国や地域から応募された315点の作品をランダムに観ることから審査は始まりました。国や地域、作家それぞれの歴史や文化的背景の差異もあることから、国際展ならではの豊かな感性と多様性に溢れた作品群でした。更に作品一点一点を丁寧に審査し一次審査選出作品を厳選しました。

審査の時点で私が重要視したのは「創造性」「主題」「質」です。応募作品の中には大きく動く世界の中で、時代性を捉え昨日までなかった新しい価値観を創出しようとする意思を感じさせる作品が複数見受けられました。主題に於いては、ただガラス作品を作るのではなく、混沌として不安定な世界を意識したうえで自身にまたは他者に問いかける要因となる主題を提示し、表現として昇華した作品もありました。質には材質(マテリアル)と品位(クオリティ)があります。素材を選出し、さらに表現手段として有効に扱うための高度な技が求められます。その技を突き詰め作品の品位を高めることで独自の技法が確立されると考えます。細部にまで意識をめぐらし素材を制御する力を十分に発揮した作品も多くあり、作者の創意と探求心を観ることが出来ました。

最終的にはこれら三つの高度なバランスによって成り立つ表現を判断基準とした視点で、私なりの審査を行いました。さらに審査員全員による慎重な協議を積み重ねた結果56点の秀抜な作品が一次審査通過作品として選出されました。

ガラス素材特有の透明性、不透明性、反射性によって織り成される世界が本展覧会会場で拝見できることを楽しみにしております。

原 智

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