佐久間 詔代
佐久間 詔代
黄金崎クリスタルパーク
ガラスミュージアム学芸員
「国際ガラス展・金沢」が初回開催から35年目を迎え、ガラス造形分野に特化した国際規模の展覧会をこれほど長く継続されていることを讃えたいと思います。主催ならびに関係の皆様方の熱意と尽力には頭が下がる思いです。
前回に引き続き、1次審査員として審査に参加させていただきました。映像を観るための機器が今回新たなものに変わり、応募作品の画像の質の向上もあり、以前より審査環境は良くなっていると実感しています。それでも、限られた短い時間の中で、画像で作品を判断するという難しさは常に伴います。まずは作品画像をよく見ることに集中し、時に必要に応じて作品の技法や意図の情報も確認しながら、審査に臨みました。
全体的には、造形への真摯な姿勢や、素材に対する探求心と洞察、磨かれた技術力に裏付けられた表現であることが窺え得るような、完成度の高い作品が散見されました。とりわけ、日本のガラス作家にそのような傾向が見られ、良質な作品の割合が高い印象を受けました。また、造形的にインパクトのあるもの、手法もしくは素材へのアプローチが独創的なものなどは票が集まりましたが、着想が斬新でユニークではあっても、表現として希薄に見えるような場合は得票には至りませんでした。
現況の応募作品は、一見してファンクショナルではない(と思しき)器やオブジェの作品が多数を占めていますが、本展の趣旨に「暮らしの中のガラスから新しい芸術表現としてのガラスまで…」と謳われているとおり、多様性を求める立場とすれば、様々なタイプの作品が今後更に出てきてくれることを期待したいです。それが、豊かなものになるのか混沌としたものになるのか、結果的に想像を超えたガラス展になれば面白いと思っています。