志甫 雅人

志甫 雅人

志甫 雅人

(公財)石川県デザインセンター
チーフディレクター

国際ガラス展・金沢において、毎回、ベテラン作家と若手作家との競演あるいは共演を愉しみにしている。長年にわたり深耕された作品とみずみずしい感性に充ちた作品とが審査会や展覧会という同じステージに並ぶこととなる。

そのような中で、21世紀はじめより回を重ねるごとに日本の若手作家の強靭なコンセプトやクリエイティビティに基づくアート作品が注目を集め、ガラスアートの可能性を実践的に押しひろげていると強く感じる。

このことは、数十年に及ぶ日本のガラス造形教育の充実と無縁ではなく、その成果であり結実と言えよう。首都圏や石川、富山、秋田、愛知、大阪、岡山などで、熱心な指導者のもとに若い才能が開花していると推測する。

また、今日のガラス造形の多様さには目をみはるものがあり、色彩や質感、かたち、軽やかさと量感、透明と不透明感、光学的効果などを巧みに利用した作品表現によって、見る私たちのきもちに染み入るように働きかけ、いろいろな感情を湧きあがらせる。

中でも今回は大地や鉱物をイメージさせる作品が大賞作品をはじめいくつか見られた。ガラスが大地に含まれるケイシャやソーダ灰、石灰石と金属からできているという物質性と「土から生まれて土に還る」という精神性を強く感じた。

さて、本展では展示会場の関係上、作品のサイズや重量において制限を設けている。そのためインスタレーションのような空間表現による作品は応募が難しくなる。しかし今回の出品作品全体を見てみると、ガラス造形ならではの佇まいの美しさ、潔さ、面白さ、恰好良さにこだわり抜いた多種多様な力作が揃ったと思える。

最後に今回も作品の輸送事故があり、損傷のため本審査会及び展覧会出展辞退となった作品があった。展示計画を立てる身としてたいへん残念な思いをしている。
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