武田 厚
武田 厚
多摩美術大学客員教授
美術評論家
この度の応募作品総数は357点で前回とあまり変わらない。また応募者の国と地域を数えても39でほぼ同数である。つまり、2000年代になってからのこの国際コンクールにおけるそうした数字に大きな変化は見られない。しかしその内容を見ると、確実に毎回新たなコンセプトによる新傾向の作品を多く見ることが出来ることは好ましいことである。とりわけ20パーセントに満たない入選確率を通過した作品については、そうした新表現を直感させる作品が主に選ばれていた。それが三年に一度開催されるこの展覧会の鮮度と意義を保っていると理解することができる。
賞の選考に当たっては、毎回のことだが、審査員相互に評価の主張と見解の違いを明らかにしながら、投票とデイスカッションを繰り返すことを主眼として進められた。その結果として決定された受賞作品のそれぞれに審査員各自は納得したと信じる。特に大賞および金賞の作品については全ての審査員の評価が集中し、あっという間に選ばれたのであるが、やや珍しいことである。
受賞作品全体から受ける印象について言えば、いわゆる現代ガラス造形としての表現領域の範囲内におさまっている、というものであると同時に、それぞれがその範囲内において密度の濃い独自性をしっかりと示している、と私は思った。しかし、その実体を裏返してみれば、理解に苦しむ程の異色性に溢れた斬新な作品が見当たらなかった、といった物足りなさを感じたこともまた事実である。ガラス芸術の将来を考えると、妙な安定的状況には騙されず、できれば、”破壊と創造”を常に繰り返す不安定さを保つ方向に作家各自が身を置くことに勇気をもって慣れていってほしい、と身勝手ながら思ったりもしている。