ジェイ・マスラー
ジェイ・マスラー
ガラス造形家
第14回目となる国際ガラス展・金沢2019は、実に楽しい経験でした。この国際展のために、教授、ガラス造形家、デザイナー、学生たちが集まり、「世界のガラスシーンの今」が、さまざまに披露されています。同時に、技術系の人たちや事務局のスタッフのみなさまのおかげで、この国際展はうまく運営されていました。
大賞を受賞したのは日本の津守秀憲さんです。この大きな作品は印象に残りました。人間がコントロールできないように見えるこの作品から、私は一つの大きな火山が真ん中から真っ二つに割れたところを想像しました。材料は陶土と、くずガラスの混合です。なかなか大変な作業だったことでしょう。
日本の横山翔平さんが銀賞を受賞しています。本審査の会場に入った途端、ほかの作品を飛び越えてこの作品のフォルムに魅了されました。近付いてみると、この作品から、半分火が通ったガラスが緑灰色の縞模様になって流れ、ねじれたフォルムを作っていくところを想像していました。見ているうちに、カリフォルニアの山々に育つ古代のブリスルコーン・パインの古樹巨木を思い出しました。
デンマークのスパー・ペータセン・マリアさんが奨励賞を受賞しています。フュージングとスランピングの技法で作られたこの作品は、複雑なデザインをしています。ウォーターベースの色をガラスにプリンティングして制作したのでしょう。
さらにもう一つの奨励賞を受賞した中国の周子正さんの作品についてお話しします。この作品は今回の国際ガラス展に寄せられた作品の中で最もコンセプチュアルな作品の一つです。ファイバーグラスの布状のものをくるくると巻き、それを重ねフュージングし、大きな濡れたチューブが重なり合っているように見えるよう創り上げます。その上により合わせたひも状の青いネオンを置いています。
私は自分のジェイ・マスラー賞として日本の宮木志江奈さんの“Fly/In between/Sink”を選びました。私の心を魅了したのは、その創造的な作品名ばかりではありません。この作品のフォルムと色の彩度にも魅かれました。
国際ガラス展に私を審査員として参加させていただき、感謝しています。このようなすばらしい国際ガラス展に、私が微力でもお役に立ったのでしたら、うれしく思います。