藤田 潤

藤田 潤

藤田 潤

ガラス造形家
日本ガラス工芸協会功労会員

35年間に亘り継続されて来たこの国際ガラス展・金沢に、当初は出品者として、今回は二度目の実物審査員として参加させてもらいました。世界にも稀な現代ガラス・アートのコンペを継続している主催者には作家の一人として感謝すると同時に、運営や審査にあたられた先人達の熱意を想い、今回も緊張感をもって審査会場に臨みました。

画像による1次審査で応募の約17%に絞られた入選作は、いずれも着想、技術ともに高いレベルにあったと思います。賞候補を選ぶに当っては十分な鑑賞時間をもった後、全員の投票でノミネートされた作品を前にして、討議のもとに決めました。審査員の選ぶ基準には大きな差は無かったように感じました。

その中でも大賞に選ばれた「胎動’19-3」は、他を圧倒する存在感と緊張感がありました。作者は前回展でも入賞している方ですが、今回も独自に開発した技法を使いながら新たな形態に挑み、前作を乗り越えようとする強いエネルギーを感じました。

私が審査員特別賞に選んだ「R-IX」は、まるで柔らかい枕が捻じられたような形をしています。作者の意図にあるように吹きガラスならではの形を探し出す過程で、人の意志を超えた生命の鼓動を感じました。

いずれの芸術分野の作家でも、まず、表現したい、表現せずにはいられない内なる衝動があって完成に向けた努力を重ねるものだと思います。連作を続けることでより完璧な形になっていくものでしょう。そして自らの殻を破り進化していくものだと思います。

本展が、時代の変化を乗り越え、真摯に作品作りに取り組む作家たちを励まし、応援してくれるであろうことを心より願います。

 

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