久世 建二

久世建二

久世 建二

陶造形家
金沢美術工芸大学元学長

1次審査は海外勢234点と、日本在住の方からの123点の画像による審査であった。1次審査の最初に357点の作品画像を、比較的ゆっくり各3枚合計約1000枚の画像を概観する。次に1点ずつ丁寧にサイズや技法やコンセプト等を確認して、審査員の意見交換を重ねて評価していく。

その中から海外作家作品の29点、日本在住の作家作品の32点が選ばれて本審査に回った。この時点で日本在住作家の作品の1次審査通過の割合が圧倒的に多い事が分かる。実験精神旺盛で多様な造形表現と高い技術力は他を圧している。

1次審査の冒頭に約1000枚の画像を概観すると、最初に気付く事がある。造形表現の形態の印象から、以前にどこかで出会った、既に見覚えのある作品と重なる事がある。独創的創造性を重要視するコンペティションに於いては、過去の発表された作品の表現に重なる既視感がある場合、その共通点と差異について吟味して、厳しく評価せざるを得ない。コピーされたものは論外であるし、作者が同じである場合、前作と比較して表現や技術に明らかな発展過程が認識されれば、充分審査の対象になり得るし、受賞の可能性も生まれる。

コンペティションとは、表現のオリジナリティーを競い合う競争の原理が働く。故に作家は実験や試作を繰り返して、多くの失敗を修正して自己の殻を打ち破り、他の追随を許さない独創の世界を目指す。しかし、他者による高い評価を得て、自己の積み上げた様式の中で発表を継続している内に、アイデアの鮮度が落ちている事に気付かずに、変化の乏しい状態をみせる事がある。発表者は創り手であると同時に、日頃から自己の仕事に対しても他者に対しても論理的で客観的に批評する目を研ぎ澄ませておく必要性を痛感する。

 

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