ヤン・ゾリチャック
ヤン・ゾリチャック
ガラス造形家
国際ガラス展・金沢は1984年に始まり、2019年には14回目の開催を迎えました。国際的に認められ、高く評価されている本展の舞台となっているのは、いにしえの文化が残した数多くの遺産を誇る都市、金沢です。石川県知事 谷本正憲氏のお話によると、国立工芸館の当地への移転により、金沢の文化都市としての輝きはさらに増すだろうとのことです。
毎回、世界中の国や地域から約400名の工芸家が本公募展にエントリーしており、画像による1次審査で約60作品に絞られます。国内外のアーティスト、評論家、芸術界の重鎮をメンバーに迎えての本審査会は、1次審査を通過した作品の実物と向き合い、最終審査を行います。
世界各地から寄せられる応募作品は、実に国際色豊かです。数が多いだけでなく内容もバラエティーに富み、明白な力強さに満ちています。早瀬のように流れ、川となり、やがて大河となって大洋に注ぎ、大洋を通して宇宙に注ぎ込むエネルギーの塊です。そのパワーと活力は否むべくもありません。
私は本国際ガラス展の図録をめくるうちに、創造の旗艦に搭乗してガラス工芸の世界に分け入るような気持ちになりました。石川県政しいのき迎賓館および石川県能登島ガラス美術館を訪れる皆さんは、こうした創造のエネルギーのただなかに身を投じる幸運と喜びを満喫することができます。
少し客観的な見地から、将来に向けて提案したいことが一つあります。来場者が応募作品の全体像を把握できるようにしたらいかがでしょうか。図録の補遺として、応募者の氏名、出身国(地域)、作品のタイトルを紹介することは有意義ではないでしょうか。今回の本審査で私の心をただちに打ったのは、作家たちが地球における人間の将来に寄せる熱い思いでした。作家たちはアーティストである以前に地球市民であり、他の市民たちと同じく、それぞれが独自の手法と感性を手段として現代社会の懸念や課題を表現しようとしているのです。
この旗艦が運ぶ膨大な作品は極めて多様性に富んだ総体を形成しており、地球と人類の未来に希望をともしてくれます。平和と繁栄の新時代(令和)に、生命のあるすべての種が調和を保って共存できるのではないか、という希望を抱かせてくれます。