ボーディル・ブスク・ラーセン
ボーディル・ブスク・ラーセン
ガラス評論家
ヘンペルガラス美術館館長
元デザインミュージアム・デンマーク館長
国際ガラス展・金沢の本審査に審査員として参加させていただき、世界中の現代ガラス造形家たちと出会う貴重な機会を享受しています。私が「ガラス造形家たちと出会う」と語っているのは、もちろんガラス造形家たちの作品のことです。多くの才能あるすばらしいガラス造形家たちは、これまで培ってきた技術や夢を棒げて、また、時には命をかけてガラスと向きあい、作品を創り続けてきました。本審査の日、審査会場に時が流れ、その間に心と頭を満たしてくれるものがあります。それは、感動的な経験です。最終的に誰の作品が各賞にふさわしいかを決めましたが、その作業は簡単ではありませんでした。
審査員たちがお互いに話しあった内容はとても参考になります。率直で啓発的な意見がかわされ、審査員ひとり1人の選択が尊重されます。
さらに、本展を組織し、運営する、石川県デザインセンターのプロ意識には頭がさがります。世界中からこれだけの数の作品を集め、しかもガラス造形家たちを紹介する、大切な、また興味深い図録を制作します。本展にとって、なくてはならない存在なのです。
ガラスに魅了された人々が、本展を訪ねる機会があるといいのですが。いつの日か、本展が、日本以外の地で開催されることを願っています。このプロジェクトの大切さは、世界中のガラス造形家たちによく知られています。本展を海外で開催することで、応募が増えるかもしれません。本展を続けていく上での石川県と金沢市の貢献はすばらしく、称賛に値します。とても重要なことでもあります。石川県・金沢市に支援されガラス芸術が発展し続けていくのでしょう。
国際ガラス展・金沢2019を見ると、これまでと比べ、質の高さにおいても斬新さにおいても日本のガラス造形家たちが優れているのは明確です。毎回、賞の大半を日本のガラス造形家が受賞する結果は、単に偶然ではないと思います。表現の多様さや、実験を重ねる勇気も明確です。
本展に選ばれた作品の多くが、同様に高い技術を持っています。審査員のひとりとして、表現やインスピレーションの強さの中にも、独創性をさがします。大賞は3回連続(2013年 2016年 2019年)で若いガラス造形家が選ばれました。2019年の大賞作品、日本の津守秀憲さんの「胎動’19−3」は、力強くドラマチックな方法でガラスを使い、力強さや宇宙を表現しています。
現代ガラス芸術はグローバルですが、創っているのは個人のガラス造形家です。ですから国や地域の特徴というより、とても個人的な出来事なのです。