特別寄稿

美しいガラスあるいは美しくないガラス — 歴代の受賞作品を振り返る —(6/9)

第10回展に当たる「国際ガラス展・金沢2007」では、ガラス造形の多彩さと完成度の高さと個性的な美感が勢ぞろいしたかのような充実した内容だった。とりわけ小島有香子、 PavelTRNKA、塚田美登里、家住利男等の受賞作品に見るガラスならではの独特の美意識が際立っていたことを記憶する。しかし皮肉なことに、その時のグランプリ作品は、これがガラスなのか、と疑いたくなるような地味な形体と色味の小さな作品だったのである。その人Lene BODKERはデンマークの作家で、作品名は「SECTION」。樹木の断片とも云える原形を基に、人体/トルソらしき形状に見立てられたオブジェである。ハンマーで注意深く削られたらしい表面の凹凸とそのマチエールについても異色過ぎるものを私は感じていた。美しいガラスが周囲に氾濫していた中では際立って簡素な造形で控えめな存在だったことがグランプリに導いた、と評価する審査員もあった。

2007年(第10回)第10回展記念特別賞「Layers of Light -MOON-」小島有香子

2007年(第10回)第10回展記念特別賞「Layers of Light -MOON-」小島有香子

2007年(第10回)金賞「愛の居留」TRNKA, Pavel

2007年(第10回)金賞「愛の居留」TRNKA, Pavel

2007年(第10回)銀賞「密空」塚田美登里

2007年(第10回)銀賞「密空」塚田美登里

2007年(第10回)大賞「SECTION」BODKER, Lene

2007年(第10回)大賞「SECTION」BODKER, Lene

2007年(第10回)銀賞「M.061201」家住利男

2007年(第10回)銀賞「M.061201」家住利男