特別寄稿
美しいガラスあるいは美しくないガラス — 歴代の受賞作品を振り返る —(7/9)
ところで、2010年の11回展以降のグランプリ受賞作品には日本の若手作家の名が続くことになった。たまたまそうなった、という見方もあるが、必然的な事かもしれない、と思わせるほど、日本の作家の作品の芸術性の高さ、その独創性が際立っていたように私は感じていた。この2022年の15回展においても同様の傾向があり、日本の作家の受賞が続いてしまったようだ。そしてその15回展のグランプリ作品を除く他のグランプリ作品のいずれもが、伝統的なガラスの美とはあまり縁のない領域で力強いガラスの造形に挑んで傑作を生み、評価されていたのである。その一つ、11回展のグランプリ作品、「相」はまだ大学在学中だった石関敬史によるコンクール初挑戦となる作品だった。ミクロの繊維状ガラスを編み込むことによってマクロの立体を造形する。つまり小さな力のつながりが構造となって「かたち」を作り出す、と自身が述べているように、その構造の可能性を観察し、追及した結果としての作品だった。それは、造形という言葉すら当てはまらない奇奇怪怪な姿のガラスではあったが、その危うい触感と存在感に多くの人が魅せられてしまったようだ。それは、創作というよりも、新たなガラス芸術の開発であり発見である、と云えるものだった。