講評会
奨励賞受賞作品について(2/2)
武田 ───── 続いては、デンマークの作家のスパーペータセン・マリアさんの作品です。これは高さ 6 cm、幅 45 cm、奥行 29.5 cmです。これについてはマスラーさんにお願いします。
マスラー ───── このグリーンの作品は作り方、テクニックがかなりユニークで、頂いた資料にはフュージングとスランピングと書かれているのですが、「作品の意図」には「ウォーターベースの色素でガラス表面に着色し、透明ガラスの光学的特性を組み合わせて、立体的模様を追求した」とあります。
このデザインはとてもシンプルなのですが、とても複雑でもあります。なぜこのような複雑なデザインになったかというと、ウォーターベースの色素でガラス表面を着色し、一緒にフュージングしているからです。
このような技術がこれからの新しい可能性としてガラスに使われ、しかも次の可能性として天才的な人が出てきて、新しい物や装置、考え方を見つけてくれるといいですね。
武田 ───── 続いては、中国の作家の周子正さんの作品です。ネオンのラインが上に引っ掛かっていますが、サイズは一番長い部分で 95 cmと非常に大きいです。ぐるぐる巻きになっているものが三つ重なっています。幅と高さは 50 cmで、奥行が 95 cmです。ネオンライトの管が不規則な形でその上に載っています。これについては、マスラーさんにお願いします。
マスラー ───── これは少し変わった作品で、ガラスファイバーでできたロールが三つあるのですが、非常に概念的で、とてもシンプルな構成です。ガラスファイバー製の布状のものをくるくると巻き、それを三つ重ねて加熱、熔着して、この形になりました。まるで巨大な濡れたチューブが重なり合っているような状態のところに、アトランダムに紐状のブルーのネオンの光が当たってきます。皆さんはこれ以上、何を望むのでしょうか。
この作品は、「素材が持つ『人が使用するもの』としての痕跡を消し去り、その実用的特性を分解し、素材に完全な自由を与えることを意図した作品。ガラスファイバー製の布状のものを温度限界を超えるまで加熱し、実用素材としての価値を奪った」と「作品の意図」には書かれています。
武田 ───── 奨励賞の最後は日本にお住まいのジョン・ヨンギョンさんの作品で、サイズは幅 80 cm、厚み 10 cm、高さ 45 cmです。バックライトで後ろから光を与えることで、前面の非常に複雑な装飾、紋様が立体的に浮き出てくるという大きな作品です。これについて、ラーセンさんにお願いします。
ラーセン ───── この奨励賞が与えられた素晴らしい作品は、ジョン・ヨンギョンさんの作品です。非常に興味深く、実験的な作品です。タイトルは「Existed」で、強いて訳せば「存在している」あるいは「存在していた」ということですが、何か作者の意図があるのだと思います。この作品は長方形で、サイズは 45 cm × 80 cm × 10 cmと大きいのですが、大きく感じたり、小さく感じたりします。サイズなど関係ないように思ってしまいます。
大切な点は、リサーチ、実験的なことをしようという意思、新しい見方をしていく勇気、決まりきった今の状態にとどまらず先へ行くこと。世界を感動させたいガラス作家にとって最重要なのは、探究心です。
この「Existed」というタイトルが語るものを、この作品を見る人が考えるのでしょう。「存在している」、「存在していた」、あるいは「これから存在する」と、語り掛けてくる情報から、私たちが捉えると、この作品は、時間を超越しています。それでもこれは現代アートです。作家がガラスの粒度と形状を変える事によって色を変化させる方法をまとめたということ。ここがコンテンポラリーの見せ方です。この作品をいろいろな角度から光を変えて見たのですが、いろいろな見え方について、審査員の皆さんが楽しんでいました。とにかく審査員の関心を引いたところが、この作品の成功のポイントです。