講評会

金賞受賞作品について

武田 ───── では、ライトを落としてもらって、こういう作品がここにあるということでお聞きください。ラーセンさん、よろしくお願いします。

ラーセン ───── 金賞に選ばれたこの作品は、本当に素晴らしく、美しい作品です。この作品はお二人のガラス作家がお作りになったものですが、実は親子で、京都で学ばれたとお聞きしています。お名前は、田上惠美子さんと田上拓さんです。
タイトルの「散華」はスピリチュアルな物語性を表しています。
私の目を奪ったのは、作品と、その周りに差し込む金色の光の美しさでした。いくつもの小さなパーツが楽しそうに遊んでいるような、しかし、とても真面目な雰囲気もあり、子どもたちが遊ぶ様子や何かを集める様子が想像されます。金色と銀色のガラスの木の葉がランプワーク、サンドブラスト、キルンワークを経て研磨されます。有機的しかも無機的に、幾何学的にカットされたガラスにその木の葉があしらわれています。
日本人の多くがこのようにイメージしていると思うのですが、極楽浄土で仏様は蓮の花の上に座られています。泥の中から蓮の花がすっと伸びて、泥は一般的には汚いものですが、その中から美しい花が開いて、そこには仏様がいらっしゃるわけです。例えばお寺の大事な行事や周年記念の時に、お坊様が最高の衣装を着て、子どもたちも着飾って冠をかぶり、紙で作った蓮の花びらを信者に向かって蒔くと聞いていますが、それを想像しました。泥は人間の大変な人生の経験を指し、花を蒔くこと(散華)によって、それを拾った信者の人たちは一時の幸福をもらったと感じるのです。その瞬間をこの作品から私たちが捉えることができるというのは、本当に素晴らしいと思います。
ガラス芸術のコンテンポラリー作品には、めったにない事ですが、この作品は詩的な輝き、洗練された美、匠の技、独自のコンセプトを兼ね備えています。審査員たちが金賞を決めた時にも話が出ましたが、この金箔の色は金賞にぴったりで、私は非常に幸せを感じています。

散華 Sange
H12×W80×D80
2019
田上 惠美子・拓 TANOUE, Emiko · Taku (Japan)