講評会

銀賞受賞作品について(2/2)

Amorphous19-1
H53×W35×D36
2019
横山 翔平
YOKOYAMA, Shohei (Japan)

武田 ───── ありがとうございます。続いて、同じく銀賞の横山翔平さんの作品について、マスラーさんからお願いします。マスラーさんはこの作品に大変ご執心で、お気に入りだったようです。

フロア ───── 作品のサイズを教えて頂けませんか。

ラーセン ───── すごく良い質問ですね。

藤原 ───── 塚田さんの作品のサイズは、高さ 60. 8cm、幅 54.6 cm、奥行 46.2 cmです。その前の張さんの作品は、高さ 62 cm、幅 62 cm、奥行 15 cmとなっています。また、横山さんの作品は高さ 53 cm、幅 35 cm、奥行 36 cmです。

武田 ───── よろしいですか。非常に大事なことですから、次の作品からはサイズを一緒に言って頂きます。
それではマスラーさん、お願いします。

マスラー ───── 昨日の審査では、事前情報がない方がいいということで審査員は何も知らされずに、いきなり作品がたくさん並べられている部屋に入りました。その時に、この作品は入口からそれほど近い所にはなかったのですが、どの作品をも通り越して引き込まれてしまいました。
この作品の作り方を考えると、恐らく原料のガラスが火にかけられ、半分火が通った状態で、泡がポコポコと出て、それが緑っぽい、灰色っぽい熱い流れになって、ツイストしたり、垂らしたりして、いろいろな形を作ったと想像しました。この状態でガラスを扱うのは難しいのですが、丁度良い温度を得たのでしょう。
もう一つ、思い出したものがあります。今、私はカリフォルニアのサンフランシスコに暮らしているのですが、カリフォルニアには古代の特殊な植物が生育しています。ブリスルコーンパイン(Bristlecone Pine)と呼ばれるカリフォルニアの山々に自生する樹木で、発見された時には既に樹齢 6000 年というものもあります。という不思議な植物なのですが、そのブリスルコーンパインを思い出しました。
私はこの作品にずっと惹かれていて、他の作品を「これはどうですか」と聞かれても、この作品を推すと言い張ったので、恐らく他の審査員の先生方の記憶に残ったのだと思います。

線の軌跡 ’18 Transition of Line '18

線の軌跡’18
Transition of Line ’18
H38×W56×D36
2018
竹岡 健輔
TAKEOKA, Kensuke
(Japan)

武田 ───── もうお一方、竹岡健輔さんの作品が銀賞を受賞しました。ほぼ同じサイズの、色が若干異なるメッシュ状に組み立てられたガラスで、立っているものと横になっているものがあります。

志甫 ───── サイズを申し上げます。組物で二つ並んでいて、高さが 38 cm、幅が組で 56 cm、奥行が 36 cmです。

武田 ───── これについてはラーセンさん、お願いします。

ラーセン ───── まず、皆さんにこの作品の作者の言葉を紹介したいと思います。竹岡健輔さんです。作品のタイトルは「線の軌跡 ’18」です。「作品の意図」には「平面から立体へ起こす時、交差し重なり合う多様な線の造形は熱の力でやわらかく動きだす。その工程に面白みを感じ、可塑性によって成り立つフォルムに関心がある。単色にして線による形を際立たせている」とあります。
作品としては一つですが、二つあるので二つの作品と呼びますが、この竹岡健輔さんの二つの作品はとても興味深く、同時に力強いです。昔からの遊びや、また、先祖から受け継いできた文化として、パターンやフォルムと遊んでいるようです。この二つの作品は籠のようでもあり、手で織った布のようでもあり、庭に生えている草を手で編んでできたようでもあり、金属やセラミックでできているようにも見えます。この作品の線のパターンは新しいテクノロジー、新しい美的センスを経て、現在までこの線をつないで、私たちの重なりあう文化の中で、ガラスという素材に新しい機会を与えています。
竹岡健輔さんには、銀賞受賞のお祝いを申し上げたいと思います。私は彼の将来の作品を楽しみにしています。彼は 22 歳と若いだけではなく、才能に優れています。本当に楽しみにしています。