講評会
審査を終えての感想及び大賞受賞作品について(1)
ゾリチャック ───── 皆さんの目の前に置いてある津守秀憲さんの作品は、人間性をいろいろ象徴しているものだと思います。人類が 5000 年前にガラスを作り、それからガラスは様々な容器や装飾に使われるようになりました。人類が作った材料であるガラス自体を今の形で見ると、土、地球に戻るというか、回帰するという印象を受けます。最初はいろいろ道具などに使われていたけれども、この作品は世間に公開されて、また元通りになる、土に戻るという印象を持たせる作品だと思います。
武田 ───── 審査を終えて、何か感想はありませんか。
ゾリチャック ───── 選ぶこと自体は非常にやりやすかったと思います。皆さんプロの方ですから、問題はなかったと思います。特に、武田先生のおかげで無事に終わりました。
武田 ───── 遠慮なく言って頂いて結構ですが、代わりに私から申し上げると、審査はどの場合もそうですけれども、2〜3回の投票を行いますが、今回は主にディスカッションが多かったと思います。
受賞作品の決定の流れについて言うと、かなり同じ作品に最初から審査員の票が集中していたので、ディスカッションにおいてもトラブルがほとんどありませんでした。その意味では、スムーズと言っていいのかどうかは分かりませんが、審査員それぞれの評価の観点は違うものの、最終的に良いと思った作品は同じだったため、私も進行係としてストレスが溜まらない審査ができました。恐らくゾリチャックさんはそういうことを言おうとしたのだと思います。
それではジェイ・マスラーさん、審査の感想とこの作品についてお願いします。
マスラー ───── 実は、ガラス芸術の審査員をさせて頂いたのは今回が初めてです。これまでの 4 年間、キューバのハバナでの仕事が多く、そこでは写真のコンペの審査員を務めていました。ですから、今回の初めての経験はなかなかエキサイティングであり、難しかったです。他の審査員の先生方や事務局など、いろいろな方々のおかげで何とか無事に審査員を務めることができたと思っており、感謝しています。
今回大賞を取った「胎動 ’19 – 3 」は、とにかく力強い作品で印象に残りました。私はこれを見た時に、火山が真っ二つに割れて、これから何かが起きてくる瞬間、千切れていく瞬間を想像しました。セラミックとガラスの混合材料を使っています。
また、金賞を取った「散華」の繊細さが好きです。ガラスの立方体が正確に幾つか並んでいて、それを見ているうちに心が楽しくなってくる作品です。
武田 ───── ありがとうございます。それではラーセンさん、審査の全体評と大賞作品についてお願いします。