講評会
ラーセン ───── 今回、世界中のいろいろな国々から応募されて集められた作品たちを見るのは、本当に楽しい作業でした。どれもデザインが優れていて、大賞を取った作品も審査員全員が投票するだけあって、ものすごく印象的な作品です。しかも、私はこれを見た時に、恐らく日本の人の作品だと思いました。それは海に囲まれた国である日本からでないと見ることができないような、大きな波が来て、その波が渦巻いて、ドーンと跳ね返るような光景をイメージしたからです。
既にマスラーさんがおっしゃったように、非常に力強い作品であると同時に、興味深く面白い作品だと思います。材料にセラミックとガラスの混合材料を使っており、それをマスターして新しい表現ができたのではないかと思っています。このような作品を大賞に選べた今回の貴重な体験をとても喜んでいます。
武田 ───── ありがとうございます。それでは藤田さん、お願いします。
藤田 ───── この展覧会は三十数年前に始まりましたが、初期の頃は出品者として、2007 年の展覧会からは 1 次の画像審査員として参加させて頂いています。本審査は今回が 2 回目ですが、先人たちの思いというか、これだけ続いていて長い伝統があり、そして国際的なコンペティションに対し、緊張感を持って臨みました。
審査会場に入った瞬間、1 次審査で選ばれた全体応募数の20%以下の作品だったので、かなり高レベルの作品が揃っていると感じました。その中で大賞に選ばれた「胎動’19 – 3」については、作者の津守さんは3年前にもこの展覧会で大きな賞を受賞されていますが、その時の作品とは技法的には同じでも傾向の違う作品であり、それも非常に力強く完成度が高い、緊張感のある作品だったので、私も最初の投票で票を入れましたし、第1席になることにもちろん賛同しました。
3 年の間に新しい傾向の作品を作り出し、それをこれだけ高い完成度まで持っていくには、本人の大変な努力があったのだろうと察しますし、今までご自分が作ってきたものを打ち破っていこうという姿勢に強い共感を覚えました。
武田 ───── ありがとうございます。最後に私も少しお話しさせて頂きます。
応募全体もそうですし、入選作品もそうですが、結果的に実用性が伴った工芸といわれる分野に属するような作品がほとんど見当たらないほど少なく、彫刻やオブジェなどの作品が大半です。そういう意味では、ガラスという素材をメインに使った戦後の新しい芸術・美術ジャンルの一つとして、そちらの方向に向かっている作家たちが大変多いということが今回もまた認識できたと思っています。
入賞作品は今回も日本の作家が結果的には大変多くなっていますが、応募全体、入選作品全体からすると、どうしてもヨーロッパやアメリカなどの海外からの応募数が 2000 年代に入ってから少しずつ減少気味になってきて、この数回は小康状態というか、あまり数字が変わっていません。この展覧会においては数字がどうということではなくて、問題は内容なので、その意味では私どもはあまり気にしないで審査させて頂いています。
今回も非常に興味深い作品が選ばれたと思います。大賞の作品については、第1回の投票で全員から票が入っており、満票はこの作品だけでした。全員が良いと言った作品が必ずしも一番良いわけではないということはご存じかと思いますが、その後、この作品を前にして審査員全員で話し合った結果、やはりこれ以外にないという結論に達し、非常にスムーズに大賞が決まりました。
津守さんの作品は私も何度か拝見していますが、今回の作品もやはり特殊な素材を作り上げて、それで何が表現できるかをいろいろ工夫・努力されています。私も他の審査員の方と同じように、今回の作品はエネルギー・生命力のようなもの、引っ張られていって何かが飛び出してくるという、目に見えない生命力的な動きを見るたびに感じる作品だと思っています。それは装飾的なものではなく、形でもなく色でもなくて、表現するコンセプトとして狙ったものがある程度表現できたのではないかと思います。
続いて、金賞の作品についてコメントを頂きたいと思います。金賞の作品は皆さんから向かって右側にあるのですが、会場の席からはほとんど見えません。デンマークからお越しのラーセンさんに金賞作品についてコメントを頂きたいと思いますが、皆さんがご覧になってからにしますか。
藤原 ───── 画像は正面のスクリーンに映せます。