講評会
銀賞受賞作品について(1/2)
武田 ───── ありがとうございます。今は画像でご覧頂いていますが、後で明かりを点けて実物をご覧頂きましょう。
次に、銀賞に選ばれた4点の作品について、それぞれコメントを頂きます。最初は張さんの作品について、藤田さんからお願いします。
藤田 ───── 実作品は写真よりもっと鮮やかな、きれいな色をしているのですが、張慶南さんの「色がある壁」という作品です。審査会では氏名等は全て伏せてあったので、最終的に賞が決まって公表されるまで、私はこれが張さんの作品だとは思っていませんでした。張さんの作品はもう長く拝見していますが、倉敷の大学で教鞭を執られていて、今までは単色あるいは2色が混ざり合ったような色彩のみを使っていらっしゃいました。形態としては、やはりこのような壁の作品です。今回は中に、ちょうど布のようなものがひらひらと舞っているようにも見受けられるのですが、赤色と、黒というか紫色が入った透明な作品です。作家からは「壁とは守る壁であり、背中を支える壁であり、覚えてくれる壁であり、超えることでもう一つの世界を」というコメントが付いていました。
私はこのようなコールドキャスト技法の作家ではないので、細かいことは分かりませんけれども、ブロックのようなものを一つ一つ作って、それに色を混ぜ、全体をまとめてキャストして大きな塊にして、それを削っていったのだと思います。非常に丁寧な仕事をされていて、写真では平面に見えますが、正面は緩く湾曲しており、弓形の軟らかいカーブを描いています。また、平面の部分もそれぞれ真っ直ぐではなく、やや斜めにカットしてあり、左側の方は薄くなっていて、大変なテクニックの持ち主だと思います。
今までは単色あるいは 2 色の、そして壁の間を抜いたような作品が多かったのですが、今回の作品は自分の殻を破って新しい壁に挑戦しているのだということを強く感じました。造形的にもしっかりした作品ですし、技術的にはパーフェクトなものだと思います。本当にご自分の殻を破った作品ではないかと思います。
武田 ───── 今、コメントがあったように、とても大きい作品です。透明感が素晴らしくきれいで、実は第 1 回の投票で、私も含めて 5 人のうち 4 人が票を入れた作品は 2 点しかありません。そのうちの 1 点が先ほどの金賞を受賞した作品で、もう 1 点がこの作品でした。残念ながら金賞は一つしか与えられないので、銀賞に回ったというわけですが、実作品はぜひご覧頂きたいと思います。立体的抽象絵画のようなもので、ガラス独特の透明感が本当に見事に生きていながら、初めて見るような美しい世界が作られているというのが、私の印象でした。
続いて、同じく銀賞の塚田美登里さんの作品について、ゾリチャックさんにお願いします。
ゾリチャック ───── この作品はガラス自体の技術の歴史を思い出させるものだと思います。ガラスを吹くための道具が発明されたエジプト時代から中世の大教会のステンドグラスの作り方まで、恐らくこの作品を作られた方はステンドグラスや窓のガラスを作る技術を深く研究されたと思います。その技術は昔から特に教会などでよく使われていたものですが、それが今回は新しく見直されて、とてもうまく生かされたと思います。私は作家ご本人とお会いしたことはありませんが、恐らく技術をとても深く研究されたと思います。このように色やテクスチャー、模様を生み出していて、本当に驚きました。
この作品にはもう一つ、とても面白いところがあります。それは実際に目に見えるものではなく、私たちの気持ちに働きかけるものです。ガラスを吹くための管や棒は当然見えないのですが、鑑賞するものに、作業風景を想像させる形態になっており、そこに面白さがあると思います。また、このような作品を作るためには、とても力があるか、あるいはコーディネーションが良いチームと一緒に制作するしかないと思います。最終的に要らない部分というか、残したくなかったところを切っていますが、その切れ目自体はとてもきれいに出来上がっており、これも面白いというか、良いところだと思います。
作家の方がこの場にいらっしゃったら、本当にお祝いと感謝の気持ちを伝えたいと思います。ありがとうございました。