特別寄稿

美しいガラスあるいは美しくないガラス — 歴代の受賞作品を振り返る —(9/9)

ところで、美しいガラスはどこへ行ったのか、と心配することはない。ガラスらしいガラスの美感は、グランプリ作品以外の多くの受賞作や入選作の中にずっと息づいてきている。仮にガラスらしいガラスの美感が見放されていったとしても、私はこう思っている。美しいだけのガラスで何が悪いのか。しかし美しいガラスが優れた作品であるという保証はどこにもない。美しくないガラスには本当に美しさはないのか。美しさというものの本質は案外に多層を成している。少なくとも優れたガラスであれば、そこに独特の美しさというものを保証してくれる確率は相当に高い筈なのである。

profile
武田 厚
多摩美術大学客員教授
美術評論家
1941年北海道生まれ。東京学芸大学卒業。 1966年山種美術館学芸員。以後北海道立近代美術館学芸部長、横浜美術館学芸部長・副館長を歴任(. 2001)。美術評論家(国際美術評論家連盟会員/ aica member)。富山ガラス造形研究所顧問、多摩美術大学客員教授。
※本展では、第6回( 1992)から審査員を、 第10回( 2007年)からは審査委員長を務め、現在に至る。