THE INTERNATIONAL EXHIBITION OF GLASS KANAZAWA 2007

ROUND TABLE DISCUSSION 特別座談会

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(武田) 銀賞はこれで終わりまして、次に奨励賞6点 の作品に移ります。
最初が三重県から出品された小田橋さんの作品です。 これについてクリステンセンさん、どうぞ。

写真14 (クリステンセン)  作者の小田橋昌代さんは日本のガ ラス作家で、
外国でもお名前を見ると「ああ、あの人 ね」と分かる、そういった作家の一人です。
ドイツの コンペにもよく出しています。
こういった外国でだん だん名前が知られてきた作家がちゃんと金沢の国際ガ ラス展にも
作品を出してくれていることに思いをはせ ると、この金沢で国際ガラス展が
開催されることの大 切さがもう一度認識されます。
奨励賞受賞作品は、非常に哲学的な、人生観を感じ させるような作品だと思います。
この船は海に漕ぎ出 しているようにも見えますが、多分、
人生を航海して いるのでしょう。そして、一人の人が自分の内面を見 ているのですが、
その内面は動物の形で表されていま す。
非常に美しい作品で、しかも同時にちょっとした ユーモアのセンス、ちょっとした物語性というものを 秘めています。こういったものが今日のガラス作品の 一つの特徴だと思います。
何年かたって、またこの金 沢でこの作者に再会できたことを私はとてもうれしく 思っています。

(武田) ありがとうございます。
次がエストニアの作家の作品です。マイヤーさん、お 願いします

写真15 (マイヤー) 昨日審査の会場へ来まして、武田先生が おっしゃったとおり、
最初はテーブルの上にずっと並 べられていた作品を5人の審査員が見て回りました。
こ の作品の前に初めて行ったときに、
この作品がテーブ ルから飛び出して私の頭にぶつかってきた、そんな感 じがしました。
この作品を作ったのはエストニアの女性の作家です。 エストニアという国は、
ここずっと近代ガラス、現代 ガラスといわれるいろいろな作品が作られ、だんだん それが
進歩してきていますが、いろいろな理由により、 今日のガラス・シーンと呼ばれる世界で
何が行われて いるのかというところでは後れを取っている国です。
そ ういった所で作られたものだというのが、まず一つ印 象的でした。
また、この作品に引かれた理由は、個人的に黒いガ ラスが好きなせいもあるのですが、
非常に強いフォル ムで、ここへもし光が通った場合には多分、光が突き 刺すように
通っていくのではないか。これを見ている とまるで古代の歌を歌うときの歌詞が思い浮かびます。 車輪であったり、
スポークであったり、アクセルであ ったり、そういったものも浮かびます。ミステリー。 「これは一体何だろう」。
でも、何だっていいのです。本 当に私を魅了してしまったのですから。フォルム、そ の質の高さ、
そして粘着性のあるようにガラスを使う というものも一つの方法だと思います。
点数が低くて も、もしかしたら私はこれを大賞に推したかもしれな い作品です。
皆さん、この前の国際ガラス展の時の大賞を取った 作品を覚えていらっしゃいますか。一見大きな氷の塊 のような作品でした。
あれも実はガラスの持つ性質の 一つの効果を表したものなのです。この黒い作品もや はり違った意味で、これまで使わなかった
ガラスの持 つ性質をうまく利用した、とても面白い作品だと思い ます。非常に生き生きしています。

(武田) ありがとうございます。
次がアメリカの作家、マーク・パイザーさんの作品 について、同じくマイヤーさん、お願いします。

写真16 (マイヤー) スライドからは分かりにくいのですが、 この作品は
かなり大きな作品です。これを作った作家 はアメリカの作家で、実は私の同僚なのです。
長年よ く知っています。もう70歳近い作家さんです。
ここ2年 ぐらいに作られた新しい作品の一つで、彼はずっと、
キ ャストによって作ったガラスの線を使ってどんな形が できるかということを
ずっと実験しているのです。と ても新しい発明だと思います。このボリュームや空間、
そして、この線を使った効果というものに対して、非 常に美しいと私は思います。

(武田) ありがとうございます。
本当にこれは大きな作品で、その前にお見せ した黒い作品は小さい作品です。これは実際に作品を 見ていただくと
サイズとコンセプトが非常によくつな がって見えると思います。次にノルウェーの作家の作 品について、ハルツバさん、お願いします。

写真17 (ハルツバ) これを作ったのはノルウェーの女性のカ ーリ・モルスタさんです。
彼女は吹きガラス作家で、い つも吹きガラスを使ってスカルプチャーのようなもの を
作っています。
この作品には「Flow」という題名が 付いています。Flowとは、流れるという意味です。
い ろいろな動きや、自然や、人間の身体の活動を表して いるようです。
または見る方向によっては大きな船が 海に浮かんでいるようにも、
またトビウオのようにも 見えます。
透明なガラスが流れる水をイリュージョン として見せています。

(武田) 次は山梨県から出品された齋藤さんの作品で す。クリステンセンさん、お願いします。

写真18 (クリステンセン) この作品は赤々と燃える炉の前で 典型的に吹きガラスを
吹きながら作っていったという 作品で、ガラスというものを思ったときに
一番の基本 の基本みたいな作品です。
今日のガラスアートが仕上 げにさまざまな技法を使い
だんだん違った方向に行っ ていることを考えると、
珍しい作品だといえます。し かし、こういった基本的なものは、
この作品を見た時 に赤々と燃える炉の前でクリエイティブにガラスを吹 く姿が
思い浮かびます。
吹きガラスの作品は機能的な ものになりがちですが、この作品はしっかりした技術 に
支えられとても装飾的です。

(武田) この作品も非常に大きいものです。
では、奨励賞の最後になりますが、チェコのブラン カさんの作品について、横山さん、お願いします。

写真19 (横山) この作品も、見た途端に「ああ、いい作品だ な」と思いました。題名は「THE DREMA(夢)」
とな っていますが、僕はルーブル美術館の「サモトラケの ニケ」の羽を思いました。
粘土のタッチの美しい羽の 部分、これは非常に有機的なフォルムで、それを支え る無機的なフォルム、
平面の磨きにも非常に味があり ます。その有機的なフォルムと無機的なものとの対比 が絵画的な
美しさを作り出していると僕は思いました。

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