(質問者2) 昨日から本審査の方を見せていただきま
した。いろいろと勉強になりました。どうもありがと
うございました。
今日の座談会のタイトルは「世界のガラス・シーン
の今を展望する」ということで、先ほどクリステンセ
ン先生が
少し解説の中でおっしゃった、現代のガラス
アートのシーンではフォルムがシンプルなものが多い
ということ、そして、
割に今回の受賞作品などでは、内
省的といいますか、静かに心に語り掛けてくるような
作品、
あるいは中国の気、インドのヨガのような東洋
的、哲学的な何かが感じられるような作品が
選ばれて
いると思います。金沢で今回選ばれた作品以外にも、現
在の世界のガラス・シーンの中で
どういうガラス作品
が主流となっているのか
ということを、もう少し詳し
くお知らせいただけたらと思います。
(武田) まさに現代のガラス・シーンについてのご質
問です。それでは、クリステンセンさん、マイヤーさ
ん、ハルツバさん、
ほかの国を含めてどういう状況か、
どういう作品傾向が多いのか。ハルツバさん、どうぞ。
(ハルツバ) 今、アートと呼ばれるものは幾つもあり
ます。例えば建築、彫刻、そういったものとガラスの
アートの世界は
同じだと思います。例えば先ほど話題
になった、機能的なものを出すべきなのか、あるいは
機能はないけれども
美しいものを出すべきなのかとい
ったときに、デザインというものが必ずかかわってき
ます。
しかし、今日のガラスのシーンと呼ばれている
世界で何が行われているかという中では、
デザインと
いうものはどちらかというと建築とかインテリアのも
のであって、ガラスではもっともっとフリーに、
自由
なフォルムを考え付いていくといったことが重視され
ているように私は思います。
将来、このデザインとフ
ォルムが合体することもあるのでしょうけれども。
(武田) では、クリステンさん、そしてマイヤーさん、 お願いします。
(クリステンセン) 今のハルツバさんと私も同じ意見
です。この現代アートと
呼ばれているもの全体をとら
えると、ガラスというものは単にその一部にすぎませ
ん。
しかし、30~40年前ごろからガラスに取り組むア
ーティストが非常に増えてきました。
それは多分、ガ
ラスという材質の持つ特別さ、非常に面白い材質であ
り、
これを使って何か表現したいと思い始めたアーテ
ィストたちが
増えているからではないでしょうか。こ
の材質をどう使うのか、どんな
テクニックがあればそ
れを生かしていけるのか。
ほかの現代アートの部分で
も同じことがいわれています。
それは漆でも金属でも
同じことが考えられていますが、多分、いろいろなこ
とができるということで
ガラスは今、非常に重要な部
分になっています。しかし、もしかしたら将来的には
違う材質が
もっともっと注目されて、そういえば昔は
ガラスが一番注目された材質だったよね、
と回顧する
時代が来るかもしれません。
(マイヤー) 今日そこに飾られている作品をご覧にな
って、今ガラスシーンで何が行われているかというと
きに、何か欠けている、
何が足りないと思うとすれば、
それは何でしょうか。「何が欠けているのか」と、本当
は私は皆さんに問い掛けたいのですが、
今日はそれは
しません。インスタレイションアートとかコンセプチ
ュアルアートと呼ばれているものは、
この国際ガラス
展にはないかもしれません。
それにはいろいろな理由
があります。世界のいろいろな国から送られてくるも
のを事務局が管理し、見せるというときには、
もちろ
ん寸法的な制約もありますし、いろいろな制約がある
ので、それはちょっとできないことです。
パフォーマ
ンスアートというものもできないかもしれません。け
れども、もしそういうものだけが欠けていると
思って
いらっしゃるとしたら、それがないからこのガラス展
が不完全ということでは決してないと思います。
そして、今回三つしか持ってきていませんが、本当
の展覧会で全部の作品を見ていただくと、今、世界で
何が行われているか
ということ、ガラスシーンを見て
いただくことができます。
(武田) では、横山さん、お願いします。
(横山) 今回の展覧会がまさに世界のガラス・シーン
なのです。これを皆さんが見て、自分なりに感じるこ
とだと思います。
雑誌などの情報などとはまた異なり、
実際に肌で感じることができるわけです。そういう意
味で、この「国際ガラス展・金沢」は意義のあるイベ
ントだと思います。
(武田) 非常に重要なご質問で、幅広く、今それぞれ
の審査員さんが答えられたのですが、ご質問された方、
取りあえずよろしいでしょうか。
私自身も、去年はイギリスのスターブリッジという
所の
ナショナル・グラス・フェスティバルを見たり、そ
の前の年には、オーストラリアで近年台頭してきてい
る若い人たちの
思索的でシンプルなフォルムの作品を
たくさん見たりしましていました。私の印象では、結
局は日本も含めて
世界の動向は非常によく似た内容を
持ってきている、と感じたものです。特にオーストラ
リアではかつてのイメージとは
全く違う優秀なガラス
界が形成されている状況ですし、審査員の皆さんがお
っしゃっているように、
むろん日本もどんどんレベル
アップはしています。この状況は、
共に教育システム
の充実と成果というところに大きく起因していると思
います。非常にしっかりした教育を受けながら
自己啓
発をして、それぞれが独創的な仕事へ向かっている、そ
んな結果だと思います。
もう一つ、二つ、ぜひ質問をお願いしたいのですが、
いかがでしょうか。
(質問者3) 大賞の作品を拝見させていただいて、す
ごく魅力的に感じました。本当に触りたくなったので
すが、
触るわけにはいかないのでお聞きしたいのです
が、あの表面はどういった加工になっているでしょう
か。
(武田) どなたか答えていただけますか。先ほどハン マーでとか何かおっしゃっていましたが。
(クリステンセン) 以前この作家さんにインタビュー
をしたことがあるので、その時のノートを見れば
詳し
いことが分かるのですが、これは非常に長いプロセス
を使って作り上げています。
最初に粘土で型を取って
フォルムを決めます。その後、彼女は以前、彫刻の勉
強をした
経験があるので、石の彫刻に少しずつ刃物を
当てて形を整えるように、ガラスに少しずつ少しずつ
注意深く、
多分繊細なハンマーを使っていると思うの
ですが、そのハンマーを当ててこういった形になるよ
うに仕上げていくのです。
今、触れたいとおっしゃい
ましたが、まさにインタビューの時に
彼女は、思わず
触れたくなるようなものを作りたいと言っていました。
(武田) ありがとうございます。それでは、時間がだ
いぶオーバーしましたが、最後までご聴講いただきあ
りがとうございます。
これをもちまして座談会・世界
のガラスのアートシーンを終了させていただきます。あ
りがとうございました(拍手)。
(棒田) 先生方には本日は貴重なご意見をたくさん頂
きましてありがとうございます。
このガラス展を、世
界の人たちが自由に参加でき、技術的に、
そして感性
を磨く切磋琢磨していく場として提供できましたこと
を
非常にうれしく思っております。今回のガラス展は
前回よりもかなり
質の高い作品が多かったとも聞いて
おります。
今後の作品にも私どもは大いに期待したい
と思っております。
「国際ガラス展・金沢2007」は、来る8月30日から
9月4日までの6日間、香林坊大和で
開催致します。「国
際ガラス展・金沢2007」の入賞・入選作品が約70点と、
第10回記念事業としまして、石川県デザインセンター
がこれまで収集した
「国際ガラス展・金沢」の入賞・
入選作品約30点を特別展示しますので、
ご覧いただけ
れば非常にありがたいと思います。
また、9月22日から
11月26日まで能登島ガラス美術館で巡回展を開催しま
す。
多数の方のご来場をお待ちしております。
では、これで「国際ガラス展・金沢2007」特別座談
会を閉会致します。最後に先生方に
盛大な拍手をもう
一度お願いしたいと思います(拍手)。どうも先生方、
ありがとうございました。
以上で終わりたいと思いま
す。ありがとうございました。