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審査講評(3)

金賞作品の講評

Vestige
Vestige
H56×W29×D31
2015

藤田 ───── 藤掛さんは2013年の国際ガラス展でも、このシリーズの前作で奨励賞を受賞されています。当時は金沢卯辰山工房の研修生で、現在は愛知県にお住まいです。私も作り手なので、どうやって作ったのだろうかと見るたびに考えているのですが、なかなかよく分かりません。恐らく板状のガラスにサンドブラストで模様を付け、それを集めて溶着させて、それをあぶり直した後に息を吹いて膨らませて、さらにへこませるという工程を経て作ったものだと思います。技法として、フュージング、コールドワーク、サンドブラスト、ブローが挙げられています。
 私が一番感心するのは、ガラスの微妙な膨らみ加減、それから少しへこんでいるような、くねったところです。何とも言えない吹きガラスの妙を感じます。また、このシリーズの前作では吹き口が見えていたのですが、今回はどこにも吹いたさおの跡が残っていないので、その面もまた別に溶着しているのではないかと考えています。この吹きガラスの絶妙なタイミングに一番感動しました。
 タイトルの「Vestige」とは、遺跡、痕跡、時の流れの積み重なりという意味だと思います。恐らく時間が積み重なっていく中の一瞬の大切さを表現されているのでしょう。全体に真っ白なガラス板を使って、清潔感漂う、非常に優れた作品だと思います。

武田 ───── 応募作家の平均年齢もだいぶ若くなっているのですが、受賞作品も30代を中心に、20代、40代前半、無論それほど若くない人も少し入っています。30代の作家が非常に多くなっており、この先のガラス界に非常に明るいものを感じる世代の動きだと思います。
 なお、この金賞の作品は審査員から4票を獲得しました。

審査員

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