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Special Symposium 特別座談会

「世界のガラス・シーンの今を展望する」

今回が第11回展となる「国際ガラス展・金沢2010」は、世界39の国と地域から470点の作品応募がありました。4月28日(水)のスライド審査会で21ヵ国74点の作品が通過し、展示会に向け21ヵ国72点の作品が寄せられてきました。そして7月8日(木)の本審査会で、17点の入賞作品が決定しました。
本審査会翌日の7月9日(水)に開催したこの特別座談会では、審査員の皆様方から審査結果の報告と入賞作品に対する講評をいただくとともに、本審査を振り返っての感想やガラスの今後に対する意見などを語っていただきました。本稿では、その概要をご紹介いたします。

日時
平成22年7月9日(金) 午前10:00〜正午

場所
石川県地場産業振興センター新館1階コンベンションホール

講師
武田  厚 多摩美術大学客員教授、美術評論家
イジィ・ハルツバ ガラス造形家(チェコ)
ヨーン・スコーウ・クリステンセン ガラス評論家、アナバーグ・ガラスコレクション・キュレーター兼理事長、元デンマーク王立工芸博物館キュレーター(デンマーク)
ウィリアム・ダグラス・カールソン ガラス造形家、マイアミ大学寄付講座教授(アメリカ)
横山 尚人 ガラス造形家

司会
棒田 和夫 国際ガラス展・金沢開催委員会副委員長、財団法人石川県デザインセンター専務理事

通訳(逐次通訳)
早川 芳子 会議通訳者

開会と講師紹介

写真 [棒田] 皆さん、おはようございます。ただ今より、「国際ガラス展・金沢2010」の特別座談会を開催いたします。私は、国際ガラス展開催委員会副委員長で、石川県デザインセンター専務理事の棒田でございます。よろしくお願いいたします。 ここで、審査員の先生方をご紹介いたします。武田厚さん、横山尚人さん、チェコからお見えになりましたイジィ・ハルツバさん、デンマークからお見えになりましたヨーン・スコーウ・クリステンセンさん、アメリカからお見えになりましたウィリアム・ダグラス・カールソンさんです。先生方には大変お忙しい中、遠くからお越しいただきましてありがとうございました。また、昨日は大変素晴らしい作品の中から賞を決めるという大変なお仕事をお務めいただき、本当にありがとうございます。通訳は、逐次通訳形式で早川芳子さんにお願いしております。どうかよろしくお願いいたします。

経過報告

[棒田] 最初に、本展の概要および経緯について、簡単にご説明いたします。今回は、39の国と地域から470点の応募がありました。4月28日に、こちらにお見えになっております武田厚さん、それとガラス造形家で日本ガラス工芸協会理事長の藤田潤さん、北海道教育庁主幹の水田順子さん、金沢市卯辰山工芸工房館長で石川県デザインセンター副理事長の小松喨一さんの4人により、画像による第1次審査を行いました。
大変厳しい審査となりましたが、世界21ヵ国74点の作品が第1次審査を通過しました。昨日の本審査には、第1次審査を通過した74点のうち、世界21ヵ国72点の作品が送られてきまして、その中から入賞作品を決定しました。大変な力作ぞろいで、本審査も大変厳しいものとなりましたが、大賞と金賞は、今ここにご覧いただいているとおりです。その他、審査結果はお手元にお配りした入賞者名簿のとおりです。
前置きが長くなりましたが、ここからの進行は、スライド審査と本審査の両方の審査員長を務めていただきました武田厚さんにお願いしたいと思います。武田さんには、簡単にスライド審査のご報告を頂き、それから入賞作品についてのコメントを先生方から頂き、最後にそれぞれの先生から、審査を振り返っての感想と、新しい世代への期待やご意見を頂ければと思います。

入賞作品へのコメント

写真 [武田]今日の進行役は、私が務めさせていただきます。まず、事前に行われたスライド審査の様子を若干申し上げておきます。いつものように、複数の審査員で画像による審査を行いました。これは世界共通なのですが、実作を見ない審査というのは非常に難しい面が多々あり、ガラス作品の構造的なことや光の問題など、さまざまなことをあらかじめ知っておくことが重要になります。そのため、応募された作家から寄せられたコメントや作品についてのデータ等も詳しく事務局から報告を受けながら、一点一点画像を見て、審査員全員でほとんど丸一日、朝から晩までかけて、何度も繰り返し見ながら審査させていただいた結果、74作品が選ばれました。
昨日ファイナルの審査がありまして、ここにお並びの皆さんと一緒に審査会場へ行きました。スライドで見たイメージとしての作品と、実作の間にどれほどギャップがあるか、あるいはギャップがないかということは、スライド審査をした者にとって非常に大きなプレッシャーになっていますし、大きな責任を感じていましたが、たまたま今回はイメージどおりといいますか、あまり大きな違いはありませんでした。むしろそれ以上に非常に迫力のある、存在感のある、バイタリティのある、造形力、力のある作品が多く選ばれていたことに、スライド審査の委員を代表して、何とかその役割が果たせたかなという、ほっとした気持ちになりました。
そしていよいよ昨日、賞の審査に入りましたが、これはあくまでも選ばれた作品全部を対象にして、同じ条件で審査を行いました。それぞれの国から来ていただいた各審査員は、それぞれの意見、考え、評価の仕方など、それぞれ違ったものをお持ちなので、それをできるだけ多く出し、そして説明や主張が足りないことのないように、あるいは思い残すことのないように、それぞれに意見を言っていただくことを基本として審査を始めました。この審査の模様についてはあえて申し上げることもありませんが、ほとんどの賞がディスカッションによって一点一点決定されていきました。最初の得票としては、優れたものに票札を置いていくわけですが、それはあくまでもその後のディスカッションの参考として、それを頭に入れながら、全員で一点一点の候補作品を評価して、最終的に賞を決定しました。
それでは早速、受賞作品について各審査員からコメントを頂くことになっております。実作は、皆さんの目の前にあるグランプリと金賞の作品だけですが、その他のものは大きな画像でご覧いただきながら、審査員のコメントをお聞きいただければと思います。
大賞を受けた作品からまいります。大賞の作品は、日本の作家、神奈川県の出身で石関敬史さんの作品です。コメントは作品1点につき1名としておりますが、大賞の作品についてだけ、私とチェコからおいでのハルツバさんの2名でコメントしたいと思います。

写真 私は、石関さんの作品を今年の早い時期に偶然見ることがありまして、これまで見たことのない不思議なガラス作りをしていると思いました。特にワイヤーを使い、メッシュ風のガラスが付いていて、ここに出品されてグランプリを取った作品以外の数点の作品も、具体的な形ではなく不思議な不定形のものが作られておりました。造形という点ではさまざまなタイプのものがありますが、ガラスでこういう作品を見たのは私も初めての体験でした。この作品は、崩れそうな、壊れそうな、皮膚感覚を感じさせるような不思議な肌合いを持っていて、しかも実に柔軟性がある。そして、どこかにわずかな空洞がある作品でした。私はこの作品に、何かこれを作られた作者の心の形が、非常にナイーブな形で、あまり飾りもなく、強い造形の意識も感じさせずに自然にできていった結果、誰もやったことのない不思議なガラス作品になったと感じました。その新鮮さ、オリジナリティーを評価して、高い評価を与えました。私のコメントは以上です。
次に、ハルツバさんからお願いしたいと思います。

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