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開催概要  Prospectus

[クリステンセン] この作品ととてもよく似た作品が前回にも同じ作家から出品され、それも審査を通って、確か賞を取ったと思うのですが、この作者はヨーロッパで少しずつ認められてきました。北ヨーロッパのエストニアはバルト海に面した国で、長い間ソ連の統治の下、人々は非常に苦労していました。特に芸術という分野では、なかなか情報も入ってこない状況だったのです。そこから独立して、今、さまざまな人にアートを通して何かを表現したいという強い思いがあるのだと思います。それが結実した作品だと思うのですが、地理的にはエストニアはフィンランドに近い所にありまして、人口200万人ぐらいの本当に小さな国です。そういった小さな国から、はるばる金沢で行われている「国際ガラス展」に応募してくださって、私たちがその作品を見て、「エストニアではこういうトレンドがあるのだな」ということが分かる、この事実もすてきだなと私は思い、この作品を推しました。

[武田] 次の奨励賞は、日本の小島有香子さんの「Layers of Light-Moon-#6」です。これにつきましては、ウィリアム・カールソンさんにお願いします。

写真 [カールソン] この作品は、先ほど皆さまにお話しした金賞を取った作品と、作るプロセスが非常に似ています。同じ方法で作られた作品です。しかし、この作品は金賞を取った作品とは全く違った情報を私たちに伝えてくれています。古典主義といったような輪が幾層にもなって広がっていく。しかし、全体としては抽象絵画のような雰囲気を持っています。用途としては、大きなボウルといえます。お皿というか、何かを盛ることができるものですが、作品としてはそれ以上のものがあります。そして、見ていると何か動きがありながら、そういった動く世界を厳しくコントロールしているようにも感じられます。

[武田] 同じく奨励賞で、チェコのTomas Hlavickaさんの作品、「VASE」を横山さんにお願いします。

写真 [横山] この作品は非常に端正すぎて、味のないかちっとしたものになりそうなほどに完成度が高く、完ぺきなものに仕上がっていると思います。それが今回の作品の中で際立った印象を与えていました。この作品の良いところは、格調高いデザイン性です。金箔を使っているのですが、細い短冊状の金箔を竹細工のような表現に仕上げて、金箔のすだれのような趣があります。中央の真っ黒い部分は花生けになっているのですが、その黒が全体を引き締めている。まるで漆と金箔という金沢をPRするかのような作品だという印象を受けました。チェコの人が作ったとは思えないほど、和の風格を持った作品だと思います。

[武田] 次の奨励賞は、日本の藤原信幸さんの作品です。これについては、クリステンセンさんにお願いいたします。

写真 [クリステンセン] 作者の藤原信幸さんは小さな村に住んでいて、自然に囲まれて作家活動をしています。その自然からいつもインスピレーションを受けて、作品は非常に重くて複雑な、エングレービングの技法を用いた、いつもこんな感じの作品を出してきます。今回は色も重く、また素材もとても重いガラスのような感じがしているのですが、下に敷いてあるのが黒く塗られた板を2枚重ねたもので、これが今までにない新しいものを出してきたなという感じがします。いつもユニークな仕事をしていると思います。私は個人的にこの作者の作品が好きです。

[武田] あと2名、奨励賞の方をご紹介します。日本の藤田紗代さんの「路」という作品について、再びウィリアム・カールソンさん、お願いします。

写真 [カールソン] 藤田紗代さんの作品は、一人一人の審査員が「これは一体何だろう」とイメージを膨らませて、まるでミステリーの謎を解くようなディスカッションが何度も何度もありました。私にとっては、これは何か古い建物の一部のような気がしていました。ガラス展ですから作品の素材はガラスだと分かっているのですが、これを見ていると、本当にこのガラスの解釈を非常に広くしてくれているという思いがします。まるで石のようにも見えます。ガラスを不透明にし、不透明と半透明の部分を作っています。そういう素材の中にもロマンスを感じ、こういった形を一体どこから作者は思い付いたのだろうという疑問からもロマンスを感じます。また、この作者は見る人に一体どんな情報を伝えたいと思っているのだろうかと思いめぐらせる、そんなところにもロマンスがあります。

[武田] こちらは非常に大きい、1mぐらいの大きい作品です。
では、奨励賞の最後です。日本の佐々木雅浩さんの「転成」という作品、もう一度カールソンさんにお願いします。

写真 [カールソン] この作品も先ほどお話しした作品と同じ系統です。技術的にはサンドブラストによる研磨を使っていますが、非常に時間のかかる工程を経ています。ですから、ガラスという素材が時間を経て変わり風格や趣が出るのは、とても面白いと思います。サンドブラストらしい作品で、この技法の巾を広げてくれた。また、近付いてよく見ると、丸い部分の一つ一つが吹きガラスの端切れだと分かります。このガラスという素材を使ってこの作者が何かを復元してくれるように見ることもでき、興味深い。なぜなら私たちはガラスを動かして自分たちのコンセプトを最もうまく表現するフォルムにたどり着くのですから。

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