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開催概要  Prospectus

[武田] 次に、審査員個々に独断で選んでいく審査員特別賞の受賞作品についてコメントを頂きたいと思います。最初はイジィ・ハルツバ賞を受賞した、ラトビア出身のInguna Audereさんの「OLD WOMEN」という作品です。ハルツバさんのコメントをお願いします。

写真 [ハルツバ] この作品を見ていると、ずっとずっと昔から伝えられたメッセージが聞こえてくるようです。比喩的です。これを私はビーナスと呼びたいと思います。小さな作品ですが、なかなか存在感がある貴重な作品だと思います。考古学の発掘で土の中から出てきたもののようで、金色と時を経た風格が美しい。今日作られたものですが、古びた美しさを備えている、時を超えた美しい彫刻のようだ。シンプルで、とても豊かです。ここにも「わび・さび」を感じます。
私は小曽川瑠那さんの「輝く陽の下で」も気に入っています。詩的で落葉について歌った俳句を思い起こさせます。「一晩で私の小屋までの道は落葉がつもった。掃かずにそのままにしておこう」

[武田] 次が、クリステンセンさんが選ばれた、日本の小田 昌代さんの「たゆたう」という作品です。

写真 [クリステンセン] 作者の小田 昌代さんは、ずっと他のガラス作家とは違った作品を作ってきました。いつも人の形や動物の形が作品の中にあります。その人や動物を見ていると、とても日本的な感じがして、鎌倉時代の木彫りの仏像を見ているような気分になることがあります。彼女はドイツやデンマークで巡回の個展をしていて、ここ2年、ヨーロッパでは非常に成功をしています。その個展のタイトルは「Inner Look」です。
この作品にある人物は自分の内面を見ているような感じがしますが、それは取りも直さず、この作品を見ている人がその人の心の内面を見ていることになる、そんな気持ちになる作品だと思います。技術的にも非常に優れていて、ガラスが光を通してくるという特徴をとてもうまく芸術的に生かしている、美しい作品だと思います。私は彼女の作品に魅かれています。

[武田] 次は横山尚人賞、スイスのCamille Jacobsさんの作品、「Homage to Johannes Itten Series」です。

写真 [横山] この作品は3点連作で、これもぱっと見てぐっと来た1点です。僕は、ガラスの創作としてどうかという1点に絞って作品を見ています。ですから、平面だからとか、立体だから、器だから、オブジェだからというように、区別して見るということはしません。この作品は、形としてはガラスの創作のふるさとともいえるような器の形なのです。この作品の良いところは、形と色が一体となったおおらかな表現です。上から見るとよく分かるのですが、大胆な色面構成が見どころです。3点ともそれぞれ異なる色の組み合わせになっていて、3点連作にしたことで、色の楽しさが広がるという狙いが成功していると思います。
後で作品名を見てなるほどと思ったのですが、作品名は「Homage to Johannes Itten Series」となっています。Ittenというのは色彩の専門家で、色彩構成の人です。作品を見てぐっと来た後で、そういう作者の意図を見て、なるほどということが分かった作品です。

[武田] 審査員特別賞、次はカールソンさんが選んだ日本の岸本耕平さんの「赤い窓」という作品です。

写真 [カールソン] 私はガラスをもう何年もやっていますが、70年代には、1970年代ですよ。決して1870年代ではありません。1970年代に吹きガラスをはじめました。その過程が大好きでした。ガラスが溶けてきて、それを吹いていき薄い皮膚のようにぷーっと膨らませ、自分の思い通りに表面処理をするというのは、素晴らしい瞬間です。ですから、ガラスの作品を見るときはいつも、昔からのガラスの器を作る伝統について考えるのです。私の作品は今や吹きガラスのプロセスに頼ってはいませんが、吹きガラスの製法を使って成功しているオブジェ的なものに魅かれます。
この作品は、布をうまく解釈しています。二つの卵形で、まるで布で包まれた二つの卵がぷかぷかと浮いているような感じがします。この作品は大きな賞を取れないが、賞を取る作品を選んでいくプロセスの中で、最後に審査員としてではなく、個人的にこれが好きということで選べるのは、うれしいことです。

写真 [武田] 審査員特別賞の最後になりますが、私、武田が選んだのは、日本の塚田美登里さんの作品、「natural verse」です。この作家の従来の仕事はさまざまな実験に取り組んできて、それぞれである程度のクオリティの高さを示した、なかなか力のある作家と見ていたのですが、今回はまた新しいものに挑戦するという、表現するということに対して非常に貪欲に自分を変えていくという姿勢を評価して、今回は選ばせてもらいました。この作品自体、非常に大きな、どっしりとした作品なのですが、その技術的な問題も含めて、恐らくはまだトライアルの段階にあるのだと思いますが、その狙いも含めて、さらにこの作家の将来への期待をかけて選ばせていただきました。
以上で受賞作品に対するそれぞれのコメントは終了です。この後、審査を振り返っての感想と、できれば将来の若い作家たちへの期待について、各審査員から短く、俳句のように端的に、シンボリックに表現していただきたいと思います。そして、皆さんから審査員の皆さんに何か質問がありましたら、頂戴したいと考えております。

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