Discussion
講評会

上位入賞作品の講評(2)

My Parallel Biology
My Parallel Biology
DAM, Steffen
(DENMARK)
糸は繋ぐThread Is Connected
糸は繋ぐ
Thread Is Connected
伊藤 真知子 ITO, Machiko
(JAPAN)
Sunset in the Wave
Sunset in the Wave
金 儁龍 KIM, Joon Yong
(KOREA)
泉Fountain

Fountain
磯谷 晴弘 ISOGAI, Akihiro
(JAPAN)
月の道—ⅣThe Way of the Moon–IV/2013
月の道—Ⅳ
The Way of the Moon–IV/2013
渋谷 良治 SHIBUYA, Ryoji
(JAPAN)

武田 ───── では、次に参ります。銀賞は4名の方なのですが、最初の銀賞の作品はデンマークのダム・ステファンさんという作家のもので、グランプリや金賞に匹敵する得票数を得て評価されましたが、残念ながら銀賞になりました。これについては横山審査員から講評をお願いします。

 

横山 ───── 銀賞の作品「My Parallel Biology」は、デンマークの作家のダム・ステファンさんの作品です。よく科学室にある生物の標本はとても生々しくて、美術とは離れた存在だと思いますが、この作品は、生き物と対極にある無機質なガラスという素材と、ガラスを使う優れた技術によって、クラゲなどをモチーフとした生々しいリアルな海の生物を、すがすがしい上品な芸術に昇華させている作品だと思います。作者の感性と優れた造形センスをうかがわせる、とても良い作品だと私は思いました。

 

武田 ───── 銀賞の2番目は、日本の作家で伊藤真知子さんの「糸は繋ぐ」です。この作品について、ラーセンさんにお願いします。


ラーセン ───── 銀賞は、その名にふさわしい作品、銀のように輝く作品に決まりました。この作品のタイトルは「糸は繋ぐ」です。この作品は工業用グラスファイバーを使っています。溶解したガラスをノズルから引き出し、延伸しながら線維化した工業用のガラス繊維を用いて、成形し、窯に入れ、高温で焼成します。グラスファイバーは、現代の科学技術の中でさまざまな目的に使われています。例えば通信技術。通信技術は人、場所を繋ぎます。また、すべてのアーティストたちが時間や空間の境を越えて一緒になることもできます。
 この作者は、素晴らしい、また同時に遊びのある彫刻的な作品を作り上げました。作者の素晴らしい技術が、このグラスファイバーという新しい素材とロココ調のフォルム、また豊かさや贅沢さをも繋いでいます。
 しかし同時に、この作品は私たちに現代社会の複雑な日々についても語っています。 銀賞はこの彫刻的な作品にふさわしいと思います。しかも、この作品は私たちの生きている時代を反映しています。
 この作品についてのファクト・シートを見て、作者のメールアドレスに気が付きました。「onlyforthemindstrong@xxx.xxx (心の強い人のためだけに)」です。とても気に入りました。このメールアドレスもまた、作品と銀賞にふさわしいものです。

 

武田 ───── 次の銀賞は、韓国の金さんの作品です。これについて、横山さん、お願いします。

 

横山 ───── 同じく銀賞の作品名「Sunset in the Wave」は韓国の金儁龍(キム・ジュンヨン)さんの作品です。この作品は一見、まさに器の形なのですが、大胆な荒削りによって彫刻的で力強い造形作品になっていると思います。柔らかい緑色のグラデーションが、ざっくりした表面の質感と心地よく解け合っています。一目見て印象に残る、良い作品だと思います。

 

武田 ───── それでは、銀賞の最後の作品、日本の磯谷さんの「泉」についてカールソンさん、お願いします。

 

カールソン ───── この作品の質の高さをご覧になると、私たち審査員が素晴らしいグラスアートを選んだのだと分かっていただけます。この銀賞受賞作品は、ガラスを最小限に解釈し、複雑なフォルムは抑え、ひとつのことに、より焦点をあてています。
 この簡潔さによって、スケールの大きさを感じます。実際にはそんなに大きな作品ではありませんが、大きな空間を感じさせます。また、じっと見ていると、作品全体が見えてきます。
 これは世界を比喩しているのでしょうか。ひとりの個人を比喩しているのでしょうか。私たちがすべての存在物と共に暮らす空間をじっと見ている、そんな意味でしょうか。私には分かりませんが、そのすべての事柄が私を虜にしました。

 

武田 ───── 銀賞は以上です。次に、奨励賞の受賞作品6点について講評をお願いします。最初の日本の渋谷さんの作品「月の道」、再びカールソンさんにお願いします。

 

カールソン ───── 奨励賞にうつります。先ほど私がお話した作品とこの作品の大きな違いがお分かりになるでしょう。タイトルは「月の道-IV」です。私は月に行ったことがありませんが、きっと月の道はこんな風に見えるのでしょうね。
 この作品は、何か工学技術プロジェクトを見ているようです。また建築物のようにも見えます。私たちを守ってくれる場所のようにも見えます。また方向を示してくれる場所のようにも見えます。
 本審査の時に出会い楽しませてもらった作品の多くは、ガラスという素材をシンプルに優美にとらえています。この作品には構図があり、目的があり、しかも芸術的な意味合いを持っています。

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