Discussion
講評会
上位入賞作品の講評(4)
めぐり
Circulation
所 志帆 TOKORO, Shiho
(JAPAN)
オブジェ 1301
Object 1301
桃原 和広 MOMOHARA, Kazuhiro
(JAPAN)
武田 ───── 次に、奨励賞の日本の所さんの作品です。これについてはカールソンさんからお願いします。
カールソン ───── この作品もガラスをまた違った方法で見せています。皆さんがこの作品を見ると、作品はある物語を語りかけてきます。その物語とは、ひとりの芸術家が空気をつかまえようと決心します。そして、その動きの中でその空気を、やる気や元気に変えようとします。
昨日この作品を見たときに、その会場が素晴らしいと思いました。なぜなら、この作品を両側から見ることができたからです。残念ながら、この写真はその良さを写し出していません。しかし、審査員たちがこの作品をギャラリースペースで見るとき、この作品の内なる生命に気付きます。この四角い型は、ほとんどこの作品の存在する限界を示しています。しかし、この泡はある種の活動であり、ある種の水泡です。それが表面へ立ちのぼり、はじけると、水の性質を持ち、変化の性質を持つ作品に変わります。
アーティストとして、また作品の作り手として、時にひとつの見方から目をそらすことがあります。しかしこの作者は、ひとつの見方や現象に心を留め、自ら展開してきた考えを表現しています。
武田 ───── ちなみにこれは35×35cmで、技術的なことを考えると最大の大きさに近い作品になっているかと思います。
次に奨励賞の最後ですが、日本の桃原さんの作品です。これは、高さは35cmなのですが横が60cmほどある作品です。これについてはラーセンさんからお願いします。
ラーセン ───── とても面白い作品です。
このスライドはとてもうまく実物をとらえています。この作品のフォルムと彫刻のような作品の不安定さがスライドからもお分かりでしょう。
私の第一印象は楽器のようだと思いました。この彫刻のような作品の中心で、くり返し奏でられるリズムを感じました。
その後、ファクト・シートを読んで、本当にこの彫刻は、音楽を語っているのだと分かりました。
また作品の技法はセラミックファイバー型鋳造法で、作者のすぐれた技術がこの彫刻を作りあげました。
作品は生命力にあふれ、いろんな方向に動いているように感じますが、同時に1つの堂々としたフォルムと配色にまとまっています。
この作者はガラスに音符と音楽のフォルムをうまく入れこんで表現しています。この方向性の存在感は、まことに奨励賞にふさわしいと思います。
武田 ───── 同じ作品について、カールソンさん。
カールソン ───── この作品は完成についてまったく異なる感覚を持っています。ガラス作家たちは自分の作品を完成させる時には、作品をよく見て、磨き、確認します。私たち作家は、表面を研ぎ、磨きます。ヒートプロセスも含めすべてのプロセスを経て、形を変えていくのです。
この作品の中に、私はすばらしい素直さとエネルギーを感じます。この作品は型から出てきたまま、形を変えていないからです。型が取りはずされ、作品はきれいにされていますが、研いだり、磨いたり、熱処理や型からフラッシングを取りはずしたりする意図が見えません。この方法は私たちにとっては、あまり見たくないものです。危険な時もあります。この作品にふれてどこかけがをすることもあるでしょう。作品の端の部分がこわれるかもしれません。しかしそのため、この作品にはエネルギーがあります。特別な作品だと思います。
武田 ───── これで奨励賞の作品が全部終わりました 。